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東京高等裁判所 平成11年(行ケ)223号 判決 2000年7月04日

原告

ヤマハ発動機株式会社

代表者代表取締役

【A】

訴訟代理人弁理士

【B】

【C】

被告

特許庁長官【D】

指定代理人

【E】

【F】

【G】

【H】

主文

特許庁が平成9年異議第75657号事件について平成11年6月2日にした決定を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第1請求

主文同旨

第2前提となる事実(争いのない事実)

1  特許庁における手続の経緯

(1)  原告は、名称を「自動車用クロスフロー型エンジンの排気装置」(後記訂正審決による訂正前の名称「自動車用エンジンの排気装置」)とする特許第2617114号発明(昭和63年5月31日特許出願、平成9年3月11日設定登録、以下「本件発明」といい、本件発明に係る特許を「本件特許」という。)の特許権者である。

日産自動車株式会社は、平成9年12月3日、本件特許につき特許異議の申立てをし、同申立ては平成9年異議第75657号事件として特許庁に係属したところ、特許庁は、平成11年6月2日、「特許第2617114号の特許を取り消す。」との決定(以下「本件決定」という。別紙1決定書の理由写し参照)をし、その謄本は、同月21日、原告に送達された。

(2)  原告は、平成12年2月4日、特許出願の願書に添付された明細書(以下「本件明細書」という。)の発明の名称、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲の減縮等を目的として訂正する訂正審判の請求をしたところ、特許庁は、同請求を訂正2000ー39019号事件として審理した上、平成12年3月28日、上記訂正を認める旨の審決(以下「本件訂正審決」という。別紙2審決書写し参照)をし、その謄本は、同年4月19日、原告に送達された。

2  本件明細書の特許請求の範囲の記載

(1)  本件訂正審決による訂正前の特許請求の範囲の記載

車体前部のエンジン室内に直列型エンジンをクランク軸の軸線が車幅方向に延在するように配設した自動車用エンジンにおいて、前記クランク軸の軸心を前輪の車軸の軸心より高い位置に配設するとともに、シリンダを側面視においてシリンダヘッドが前記車軸の上方に位置付けられるように後方へ傾斜さてシリンダ背面とダッシュパネルとの間に側面視略三角形状の空間を形成し、この空間に前記シリンダに接続された排気マニホルドを配設すると共に、この排気マニホルドに触媒装置が設けられた排気管を接続してなる自動車用エンジンの排気装置。

(2)  本件訂正審決による訂正後の特許請求の範囲の記載(「」内が訂正された箇所である。)

車体前部のエンジン室内に直列型エンジンをクランク軸の軸線が車幅方向に延在するように配設した自動車用「クロスフロー型」エンジンにおいて、前記クランク軸の軸心を前輪の車軸の軸心より高い位置に配設するとともに、シリンダを側面視においてシリンダヘッドが前記車軸の上方に位置付けられるように後方へ傾斜さ「せ」てシリンダ背面とダッシュパネルとの間に側面視略三角形状の空間を形成し、この空間に前記シリンダに接続された排気マニホルドを配設すると共に、この「排気マニホルドはシリンダヘッドから下方へ向かって延出され、」排気マニホルドに触媒装置が設けられた排気管を接続してなる自動車用「クロスフロー型」エンジンの排気装置。

3  本件決定の理由の要旨

本件決定は、本件発明の要旨を訂正前の特許請求の範囲に記載のとおりと認定した上で、本件発明は、本件決定に引用された刊行物(トヨタカムリ(EーSV10系)新型車解説書、昭和57年3月)に記載されたものと同一であると判断し、特許法29条1項3号に該当するとして、本件特許を取り消した。

第3当事者の主張の要点

1  原告

本件訂正審決による訂正が特許請求の範囲の減縮を目的とするものであることは明らかであり、本件特許を取り消した本件決定の取消しを目的とする本件訴訟の係属中に本件特許について特許請求の範囲の減縮を目的とする本件訂正審決が確定した。

そこで、本件決定が本件発明の要旨を訂正前の特許請求の範囲に記載のとおりと認定したことは誤りに帰し、この瑕疵は違法であるから、本件決定は取り消さなければならない。

2  被告

原告主張のとおり、本件特許について特許請求の範囲の訂正を認める本件訂正審決が確定したことは認める。

理由

1  本件訂正審決の確定により本件特許について特許請求の範囲が前記のとおり訂正されたことは当事者間に争いがなく、この訂正によって本件特許について特許請求の範囲が減縮されたことは明らかである。

そうすると、本件決定が本件発明の要旨を訂正前の特許請求の範囲に記載のとおりと認定したことは、結果的に誤りがあることになり、この誤りは本件決定の結論に影響を及ぼすものとして違法であることが明らかであるから、本件決定は取消しを免れない。

2  よって、原告の請求は理由があるからこれを認容し、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 永井紀昭 裁判官 塩月秀平 裁判官 橋本英史)

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